内視鏡を使って直腸カルチノイドを切除してもらった時のお話。

先日、少し前に受けたクローン病の定期検査についてのお話を聞きに病院へ行って来ました。結果としては、今年も大きな異常もなく寛解維持という内容でした。心配していた胃潰瘍や十二指腸潰瘍の方も特にクローン病との関連性は無いようで、症状もだいぶ良くなってきているとのお話でした。お陰様で、これで今年もまた一年安心して過ごせそうです。

もっとも、呼吸器系にも持病を抱えているので、これからは新型コロナウイルスの感染にも気をつけなければならなくなりそうではあるのですが・・・ww

さて、そもそも私がクローン病と直腸カルチノイドという診断を受けたのも、たまたま受けることになった内視鏡検査が始まりでした。そこからは、紆余曲折がありながらも何とか腫瘍を切除してもらうことができたのですが、今回はそのカルチノイドを切除してもらった時のことについて書いてみようかと思います。

ちなみに、直腸カルチノイドがどのような病気なのかについては、下の記事の中で書いていますので、また気になるようでしたらお時間のある時にでも覗いてみてくださいね。

切除といっても内視鏡を使ったもの

「腫瘍を切除」というと、なんだか大きな手術を受けたように思われるかもしれませんが、この時私が受けたのは「内視鏡的治療」というものです。切除とはいっても、お腹を大きく切り開くような外科的な手術とは違い、内視鏡を使って腫瘍を切り取るといった形のものなので、確かに手術というよりは治療という印象が強かったことを覚えています。

内視鏡を使って腫瘍を切除する方法にはESDやEMRなどいろいろな種類があるのですが、その中でも私が受けることになったのはESMRL(Endoscopic Submucosal Resection with Ligation device)と呼ばれる術式。なんとも、良くわからん横文字ですなww 日本語に直訳するなら「結紮装置による内視鏡的粘膜下層切除術」だそうです。これなら、なんとなくイメージが湧くかな・・・( ̄▽ ̄;)

ESMRLってどんなことするの?

私も医療関係者ではないので、そこまで詳しく説明することはできないですし、ましてや無闇矢鱈にオススメすることもできないのですが、私のわかる範囲でザックリと言うなら、ESMRLでは、内視鏡の吸引機能とEVLデバイスという装置を使って腫瘍を結紮してから、スネアと呼ばれるリング状のワイヤーに高周波電流を流して腫瘍を焼き切るといった方法で切除を行います。

同じく高周波電流を使った機器で腸の粘膜と一緒に腫瘍を剥がし取るESD(Endoscopic submucosal dissection)や、スネアを使って腫瘍を焼き切るポリペクトミーやEMR(Endoscopic mucosal resection)などと比べると、ESMRLはどちらかというと後者の方に近い部類に入るのではないでしょうか。

また、具体的にどのような手順で治療が行われているのかについては、こちらの「これからの 大腸がん内視鏡治療 – 広島市立広島市民病院」というPDFの中で、図解入りで詳しく説明されていましたよ。

実際の治療の流れ

それでは、ここからは私が体験した内視鏡的治療の流れについて、もう少し詳しく見ていきたいと思います。患者さんの側でする事といっても、基本的には大腸内視鏡検査と特に何も変わりはありませんでした。

前日の食事と前処置

まず、食事は前日の夕食まで摂ることができます。ただし、入院中のため検査用に病院で用意された給食なので、お粥に具なしのお味噌汁や煮豆など極々消化の良い物だけでしたけどねww

あとは、通常の大腸内視鏡検査と同じように前日の就寝前に緩い下剤を飲み、当日の早朝から腸の中をキレイにするための下剤を飲んで大腸の中をカラッポにしていきます。まぁ、やっぱりここが一番辛いところですね( ̄▽ ̄;)

前処置が終わったら、看護師さんに点滴を装着してもらったら準備完了です。

検査室での様子は?

しばらくの間病室で過ごしていると、検査室の方からお呼びが掛かるので、更衣室で検査着に着替え検査室へと向かいます。検査室へ入ると、部屋の中には看護師の方が数名と医師の方が数名。部屋の様子は、いつもの内視鏡検査の時とそれほど変わらないものの、人数も多めで少し物々しい雰囲気だったので、ちょっとだけ緊張しましたww

身体の左側を下にして検査台に横たわると、ちょうど身体の正面あたりにモニターが何台かあり、治療の様子をリアルタイムで見ることができます。先生は、背後から内視鏡を操作しながら治療を行うようなスタンスですね。

治療中の様子は?

内視鏡の先端には、EVLデバイスという腫瘍を結紮するための装置が取付けられているのですが、背を向けた状態で寝ているので、私の側からは殆ど見ることができません。しかし、いつもの内視鏡検査と特に感覚の差はなく全く違和感は感じませんでした。

そうこうしているうちに内視鏡の先端は現場に到着し、カメラが捉えた腫瘍がモニターに映し出されます。さて、ここからが先生達の腕の見せ所。内視鏡を巧みに操り腫瘍の周りに目印を付けていきます。次に、腫瘍を安全に切除するため腫瘍の下側に生理食塩水を注入して腫瘍全体を持ち上げ周囲の粘膜との間に適度な空間を作っていきます。

続いて、EVLデバイスが腫瘍に対して真っ直ぐちょうどスッポリと覆うような位置になるように内視鏡を操作しつつ、何度か吸引をしたり放したりを繰り返しながら腫瘍がベストポジションに収まりしっかりと吸引ができたところで、Oリングという小さな輪ゴムで腫瘍の根元を巾着状に結紮します。

これがまた、上手い具合に吸い付くわけですよ。わかりやすい例えで表現するなら、掃除機でほっぺたをスッポンする要領で、形はちょうどおでんの具に入っている餅巾着を逆さまにしたような感じとでも言えば良いでしょうか。

あとは、出来上がった巾着状の腫瘍の根元にスネアと呼ばれる金属製のワイヤーで作られた輪っかをかけながら、高周波電流を流して粘膜と一緒に腫瘍を焼き切ってしまいます。切り取られた腫瘍はすぐに回収されて病理検査に回され詳しい検査が行われます。

当然のことながら、切除された断面はそのままでは出血したままになってしまうので、専用のクリップでつまんで止血していきます。クリップは、極々小さな物で傷口の大きさに合わせて複数個使いながら止血するのと同時に傷口を塞ぎます。

私の時は、確か4つか5つくらい掛けられていて見た目はちょっと痛々しかったのですが、止血に使われたクリップは傷口が治るにしたがって自然と外れ、その後便と一緒に体外へと排出されるそうなので心配ないそうですよ。

治療中の痛みは?

また、この時は鎮静剤などは特に使っていなかったので意識もハッキリとしていて、目の前のモニターの中で繰り広げられている一連の光景が、実際に今自分の身体の中で行われているはずなのに、特に大きな痛みもないのでとても不思議な感覚でした。

強いて言えば、スネアで腫瘍を焼き切るときに一瞬だけチカっとした痛みというか熱さを感じたくらいで、あとは内視鏡が動いているのさえ分からないくらいでした。でも、グロテスクなシーンが苦手な方は、逆に気分が悪くなってしまうといけませんので、モニターを見るのは控えたほうが良いかもしれませんね( ̄▽ ̄;)

掛かった時間はどのくらい?

今回、治療にかかった時間はというと、検査室に入ってからだいたい30~40分程度といったところでしょうか。自分が考えていたよりもずっと短時間で終わった感じで、それこそ「え?もう終わったの?」というくらいにあっけなく終わりました。

腫瘍のあった場所が、直腸から割と近かったということもあり、比較的短時間で済んだとも言えると思いますが、切除を行う場所が複数箇所に及んだり大腸のもっと奥の方だったりと条件が異なればまた身体に掛かる負担や苦痛なども変わってくるかもしれませんね。

治療後の様子や食事について

治療が終わったあとは、車椅子で病室まで送ってもらい、ベッドの上で2時間ほど安静にして過ごします。特に痛みもないので、少し休めば普通に動き回ることもできるのですが、そこはやはり油断大敵です。私も、点滴が外されて身軽になったこともあって気が緩んでしまい、調子に乗って院内のコインランドリーで洗濯をしたり、見舞いに来てくれた友人と院内を歩き回ったりしていたからか、2日後くらいにトイレで出血してしまい、再び点滴生活に逆戻りとなってしまいました。

その時は、週末の夕方頃に出血したのですが、夜勤の先生が血相を変えて飛んできて、看護師さんが慌ただしく点滴を用意する様子を見て、「これは、只事ではないな・・・」とゾッとしたのを覚えています。いや、今思い返してもホント申し訳なかったです。

幸いなことに、しばらくして出血も治まったので、緊急で内視鏡的止血術などを受けることもなくて済みましたが、週明けからは検査の予定が目白押しだったので、結局、そこから退院直前までの3週間は点滴栄養のみの絶食生活になってしまったとさ。

お調子に乗ってしまうと、こんな事になってしまうこともありますが、ちゃんと安静にしていれば、翌朝くらいからはちゃんと食事が摂れるようになるはずですよ。もちろん、お粥とかお腹に優しいものしか食べられませんけど・・・ww

入院に掛かる日数

私の場合は、クローン病の検査も合わせて行う必要があり、先生方の予定との兼ね合いなどもあったので、おおよそ1ヶ月と長い入院になってしまいましたが、普通に内視鏡的治療だけでしたらだいたい日帰りから1泊2日くらいと聞いています。このあたりは、お医者様の治療方針が大きく影響するところなので、担当医師の先生とよく話し合って無理のない予定で治療に臨みたいところですね。

治療には確かにリスクもあります

比較的安全で痛みも少なく、術後の回復も早いと一見良いこと尽くめのように見える内視鏡的治療ですが、全くリスクがないというわけでもありません。内視鏡を使って腫瘍を切除する治療には、必ずと言ってよいほど穿孔といって腸の壁に穴が空いてしまうリスクが付いて回ります。また、私のように術後の出血も意外と侮れません。

治療にまつわるリスクに関しては、必ずお医者様が事前に説明をしてくださるはずなので、あとで後悔しないためにも、不安に思うことは我慢せずに医師に相談することが大切だと思いますよ。

術後の経過は?

その後の病理検査では、切除した腫瘍から癌化した細胞は見つからなかったものの、その後も数年の間は半年毎の造影CT検査と血液検査で経過観察を続けることになりました。幸いにも、その後も転移や再発の兆候は見られなかったため、現在では半年毎の造影CTも年一回へと回数が減り、CT検査も造影剤を使用しない単純CT検査になったことで、検査による身体への負担もだいぶ軽くなりました。

切除によってできた傷痕の方は、毎年恒例のクローン病の定期検査の際に合わせて内視鏡を使って観察をしてもらっているのですが、切除から4年近く経過した今では白っぽく痕が残っているくらいで、もう殆ど判らないくらいに回復しています。

あとはクローン病と喘息の治療に専念したいものですね・・・というより、これ以上身体を壊さないように気をつけなければっww


「手術」と聞くと、たとえそれが大きくても小さくても、誰でも皆尻込みしてしまうものだと思います。私も当時は、不安でたまりませんでした。カルチノイドを切除してもらってからも、数年の間は検査の度に再発や転移に怯えるばかりでした。

本当は、もっと早くに検査や治療の体験談を書きたいと思っていたのですが、ブログを書こうとするたびに最初の頃の嫌な気分が蘇って気分が落ち込んでしまい、どうしても書く気にはなれませんでした。ですが、時が経ちここへ来て持病の病状も安定してきたからか、はたまた記憶が薄れてきたからか、前よりも少しだけ病気と前向きに向き合えそうな気がしています。

入院中に、同じように炎症性腸疾患の友人から「大丈夫だよ。きっと良くなるからね。」と励まされたけれど、なかなか前向きになれない自分がいました。今の私も誰かにそう言ってあげたいけど、病気の辛さはきっとその人にしか分からないものだと思うから、とても言えそうにありません・・・。

でも、病気って知らないうちに気づかないくらいのスピードで進行するのと同じように、自分でもなかなか気づけないくらいのスピードで良くなっていくものでもあると思います。いつか自分の病気と向き合える日が来る、今よりも少しだけ良くなったと思える日が来るんだと、その希望だけは捨てずにいて欲しい。今から数年の後、私と同じように「あれ?なんか最近ちょっとだけ良くなったかも?」と思える日が訪れるやもしれません。

慢性的な病気との闘いは長期戦です。あまり頑張り過ぎないように、完璧に拘り過ぎないようにゆるりと参りましょう。今回も、最後までお読みいただきましてありがとうございました。それでは、また。

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