さて、我が家のリビングでのTVの音量紛争はBluetoothトランスミッターを導入することで見事に解決されたのですが、それと同時に新たな問題点というか気になる点が出てきました。それは、テレビの画面上で再生される映像とヘッドホンから聞こえてくる音声のタイムラグ「音声の遅延」です。
音声の遅延の原因は、主に使用するコーデックによる部分が大きいのですが、実際にBluetoothで使われる標準コーデックであるSBCを使用したワイヤレスヘッドホンで視聴してみると、全く視聴に耐えられないといった程ではないにしろ、映画など長時間画面に集中して視聴する時などには、やはりどうしても映像と音声のタイムラグが気になってきてしまいます。
そこで、もう少しこの遅延について改善できないものかと考え、ヘッドホンをより遅延の少ないコーデックに対応した製品に交換してみることにしてみました。
Bluetoothを使った通信で利用されるコーデックなどについては、下の記事の中で触れていますので、また宜しかったら覗いてみてくださいね。
コーデックによる遅延の違い
まず、コーデックの違いによって実際のところ音の遅延にどのくらいの差があるのかということについては、非常に興味が湧くところだと思うのですが、ネットで調べてみるとそれらについて詳しく実験・検証しているレビュー記事がありましたので、そちらの記事を参考にBluetoothの通信で使われる主なコーデックのおおよその遅延量を少ない順に表にまとめてみました。
コーデック | 遅延量 |
---|---|
aptX LL | 40ms未満 |
aptX | 70ms(±10ms) |
AAC(128kbps) | 120ms(±30ms) |
SBC | 220ms(±50ms) |
AAC VBR(256kbps) | 800ms(±200ms) |
こうして見ると、クアルコムのaptX LLが圧倒的に遅延が少ないようですね。標準コーデックであるSBCと比べてみると約82%の短縮、aptXでも約68%の短縮を実現しています。
ただ、あくまでも単位が「ミリ秒」なので実際にその差を体感できるのかといった点について疑問を持たれる方もみえると思うのですが、拝見した検証記事ではその点についても具体例を挙げて解りやすく解説されていて非常に参考になりました。
最終的にaptX対応のヘッドホンを試してみることに・・・
さて、実際にaptX LLに対応したヘッドホンを探してみると、これがなかなか見つからない。aptXに対応した製品なら、お手頃な価格で結構見つかるのですが、aptX LL対応となると途端に価格帯が跳ね上がるww
そもそも、aptX LLに対応した製品自体が少ないようなので仕方がありませんが、今回はaptX LL対応の製品は諦め、選択肢の多いaptX対応製品の中から選ぶことにしました。そんな中、ちょうど手頃な価格帯とデザインが気に入って購入したのがAugust EP640というヘッドホン。
August EP640
そして、早速到着した商品がこちらです。
オーバーイヤー型のヘッドホンなので、もう少し大きな箱をイメージしていたのですが、思ったよりもコンパクトな外箱で開封してみると下の画像のように折り畳まれた状態で収納されていました。ちゃんと、郵送中に箱の中で暴れないような工夫がされていて、お値段の割にはちゃんとした梱包がされていましたよ。
商品の内容
箱の中には、ヘッドホン本体と取扱説明書の他に、充電用のmicroUSBケ―ブル、有線接続の際に使用する3.5mmオーディオケーブルが付属していました。まぁ、内容は至って普通ですよね。
外観と各部の寸法
このヘッドホンの外観としては、全体的に凹凸の少ない滑らかなデザインが特徴なのですが、質感はそれほど安っぽくもなくオーバーイヤー型ヘッドホン特有の重厚感もあります。色は、レッドとホワイトが用意されていたのですが、今回はスッキリとしていて飽きのこないホワイトを選択してみました。
本体の寸法は、実寸でスライダーの調整分を含めて高さが約186~205mm、横幅は約194mmとなっています。
また、奥行きは約70mmあり、ハウジングの幅を含めると約73mmあります。
また、取扱説明書では、本体重量の欄に241.6gと記載されていたのですが、実際に計ってみると264gでした。
折り畳みの状態
EP640は、両サイドのアームがスライダーのあたりから内向きに折れ曲がるような構造になっており、折り畳むとちょうどこのような形になります。少しだけコンパクトになりますが、持ち歩くにはやはりちょっと嵩張りそうですね。
ちなみに、折り畳みの関節部分はこのような感じです。少し見にくいかもしれませんが、関節部分にはスピーカーへの配線が通っていて、頻繁に折り畳みを繰り返す事が多いような場合、配線の耐久性が少し気になるところです。
本体を折り畳んだ状態での寸法は、高さが約135mm、幅が約175mmとちょっとだけコンパクトになります。
また、今回は室内での使用が前提だったので購入しなかったのですが、別売りで移動中の傷などから本体を守るための収納用ハードケースも販売されていました。蓋の内側には、小物類を収納するためのポケットも付いていて、付属のケーブル類と一緒に保管するのにはちょうど良さそうですね。
ヘッドバンド
ヘッドバンド部分のクッションは、厚みが約13mm、幅は約30mmあり、イヤーパッドよりも少し反発力が強めです。程良くヘッドホンの重量を支えてくれるので、装着していて頭頂部が痛くなるといったこともありませんでした。
ただ、表面の合皮はしっとりとしていて肌触りが良い反面、装着時に前後方向へ滑りやすいという点が少し気になりました。下の画像は、クッションの柔らかさが伝わらないかなと思ってヘッドバンドの中央付近を指で押してみたところなのですが、あんま伝わらないですよねぇww
スライダー
アームの長さを調整するスライダーの調整幅は約28mm。正面から見てアーム部分が弧を描くようなデザインになっているため、スライダーを短めに設定するとイヤーパッドの上側の締め付けが強くなってしまいます。装着していて耳が痛くなる場合などは、スライダーを少し長めに調整してあげると良いかもしれませんね。
イヤーパッド
イヤーパッドのサイズは、縦が約105mm、横幅が約80mmとなっていて、ヘッドバンドのクッションと同じように表面が柔らかい合皮でできています。こちらも、装着感は非常に良いのですが、その柔らかさから想像するに耐久性の面では、あまり期待できそうにありません。
装着時に付いてしまう皮脂が結構気になりますし、ある程度経年劣化が進んでくると表面がポロポロと剥がれ落ちてくると思うので、何か薄手のカバーを被せたりしたくなります。ただ、このあたりは使用後のお手入れによってだいぶ変わってくるかもしれませんね。
ヘッドバンドと同じように、イヤーパッドの部分を指で押さえてみましたが、こちらはヘッドバンドのクッションよりもかなりソフトな感じで、私は普段から眼鏡をかけているのですが、装着時にも眼鏡のテンプル部分がパッドに圧迫されて耳の上の辺りが痛くなるといったようなこともありませんでした。
やっぱり、伝わらないですよねぇ・・・( ̄▽ ̄;)
ちなみに、ハウジングの可動域はそれほど広くはありませんが、耳の角度に合わせるには充分なくらいの可動域でしたよ。
各ボタンの配置と操作感
電源ボタンや音量調整ボタンなどの操作系は、本体右側面に集約されていて、各ボタンの配置は画像のようになっています。ボタンを押した感触はしっかりとしたクリック感があるものの、硬いといったことはなく操作は比較的し易かったです。
しかし、起動時の電源ボタン長押しの間のとり方に少し慣れが必要で、起動時のメロディーが流れても長押しが短いと起動しなかったり、逆に長過ぎるとペアリングモードになってしまったりと、少し気難しいところがあります。一度起動してペアリングが完了してしまえば、その後の動作は非常に安定していて快適に使用できましたけどね。
ペアリングの方法
ペアリングの方法は、いたって簡単。電源ボタンを3~4秒程度長押しすると起動時のメロディーが流れるのですが、そのまま更に数秒長押しを続けると本体右側面の赤色と青色のLEDが交互に点滅しペアリングモードになります。
あとは、スマートフォンなど接続したい機器の方でペアリングの設定を済ませ、青色のLEDが数秒おきに点滅する状態になればペアリングは完了です。
スペック
主な仕様
Bluetooth バージョン | ver.4.1(NFC対応) |
チップセット | CSR8645 |
通信範囲 | 約10m |
周波数 | 20Hz~20KHz |
スピーカー出力 | 10mW |
音圧感度 | 113dB |
ひずみ | ≤1. 0% |
Bluetoothの規格についてはver.4.1に対応しており、NFCによるペアリングにも対応しています。使用されているチップは、クアルコムのCSR8645。
通信距離は10mとありますが、これはあくまでも理論値での話ですし、接続する機器の仕様にも依存すると思いますので参考程度に考えておいた方が良いでしょうね。
試しに、現在使用しているAgdate BT-B10というトランスミッターと接続した場合は、我が家のような小さな木造家屋なら部屋を移動したくらいでは接続が切れるようなこともありません。さすがに、庭に出ると通信が不安定になってしまったことからも、鉄筋コンクリート造の建物などの場合はもう少し通信距離が落ちるのではないでしょうか。
また、スマートフォンとの接続の場合は、少し通信距離が短くなるようで階を移動すると接続が不安定になる場面もありましたが、遮る物がなく見通しのきく状況なら5m程度離れても特に問題はなく通信も安定していました。
バッテリー容量や充電時間など
バッテリー容量 | 420mAh |
充電時間 | 約3.5時間 |
動作時間 | 約15時間 |
待受時間 | 約12日間 |
オーバーイヤー型のワイヤレスヘッドホンは、バッテリーを搭載するスペース的にも余裕があるためか、バッテリーの容量は420mAh、稼働時間も約15時間とワイヤレスイヤホンなどに比べてかなり余裕があります。
フル充電時の稼働時間については、使用状況にも大きく左右されるので、正確に時間を測定したわけではありませんが、我が家では日常的に断続的な使用で、だいたい3日に一度くらいの充電ペースなので、通勤・通学などの使用でもバッテリーの持ちは充分なのではないかと思います。でも、待受時間12日間についてはまだ試していませんが、ホントにそんなに持つのかな?
また、バッテリーの残量が少なくなってくると本体右側面の赤色LEDが点滅して知らせてくれます。
充電ポートは、同じく本体右下に付いており、付属のmicroUSBケーブルを使って充電をします。充電中は、本体側面の赤色LEDが点灯し、充電が完了するとLEDが消灯します。充電は、約3.5時間で完了します。
有線接続
また、EP640は無線としてだけでなく3.5mmオーディオケーブルを接続することで有線ヘッドホンとしても使用することができるので、外出時に不意にバッテリーが切れてしまった場合でも心強いですよね。
ノイズキャンセリング機能について
EP640には、cVc6.0(Clear Voice Captur6.0)というノイズキャンセリング機能があるのですが、どうやら、これがちょっとした誤解を生んでいるようです。私も、使い始めた頃に音楽などを聞きながら「ノイズキャンセリングって書いてあったけど、電源を入れてもなんか全然変わり映えがないんだけど・・・」と感じていました。
しかし、CSR8645の仕様やcVcについてよくよく調べてみると、このcVcとはEP640に搭載されているCSR8645などクアルコム製のチップに組み込まれているノイズキャンセリング機能のことで、デジタル処理によって音声通話中の周囲の騒音を軽減して会話を聞き取りやすくするための技術で、周囲の騒音と逆位相の信号を使ってノイズを打ち消す所謂アクティブノイズキャンセラーとは、まったく別な技術だったのです。
そもそも、音声通信時の通話品質向上を目的とした技術なので、音楽鑑賞やテレビ視聴などには全く関係がないため、使っていて何の代わり映えもしないというのは、当然といえば当然というわけだったんですね。
また、CSR8645の仕様やcVcについては、下のクアルコムのサイトの中で詳しく解説されていましたよ。
実際に使用してみて
視聴音質
音質は、視聴する楽曲にもよりますが、高音と低音が少し強めな所謂「ドンシャリ」気味な感じ。もともと、個人的に低音が強めな音は好きなのですが、そんなにくぐもった感じはなく音はクリアで、定位感もそれなりにあるように感じました。
試しに、以前使っていたSBCのワイヤレスヘッドホンと今回のEP640をそれぞれ聴き比べてみたのですが、やはりaptXの方が一段とクリアに聞こえました。リーズナブルな価格でここまでの音質が手に入るのなら、充分に値段以上の価値はあるのではないでしょうか。
通話中の音質
また、充電ポートのすぐ隣には通話用のマイクが搭載されていて、スマートフォンと連携することで通話用のヘッドセットとしても使用することができます。
普段は、テレビの視聴くらいにしか使用する予定はないのですが、せっかく通話機能が付いているので試しにスマートフォンに接続して通話中の音質についても確認してみました。通話時の音声はモノラルになってしまうので、音質はお世辞にもクリアとは言えませんが、密閉型ヘッドホンのため周囲の音がそれほど入ってこないのとcVc6.0の効果か会話はとても聞き取り易かったです。
相手方にもどのように聞こえているのか聞いてみましたが、ブツブツと音声が途切れるようなことはなく、マイクの感度も悪くないようでヘッドセットを使って会話していると言わなければ相手は気づかないくらいの通話品質でした。
さて、なかなかコストパフォーマンスで大変気に入ったEP640なのですが、先日、家長のお誕生日にお祝いを何も用意していなかったこともあり、そのままお誕生日プレゼントになってしまいました。もちろん、本人はコーデックやら音声の遅延など知る由もないのですが、その後は毎日のように時代劇やら映画やらを見ながら喜んで使ってくれています。
しかし、密閉型のヘッドホンになって以前よりも没入感が増したおかげで、周囲の呼びかけに気が付きにくくなってしまったのにはちょっと困りものですが・・・( ̄▽ ̄;)
オーバーイヤー型のヘッドホンって見かけはちょっと大袈裟かもしれないのですが、使ってみるとイヤホンとはまた違った使い心地でなかなか良いものですよ。皆さんもよろしかったら一度お試しを。それでは、今回も最後までお読みいただきましてありがとうございました。
コメント
最近はAugust EP650やCREATIVE Sound Blaster JAM V2など五千円以下の価格帯でaptX LL対応ヘッドホンがいくつかありますね。
イヤホン型でよければさらに選択肢が増えます。
通りすがり 様
コメントしていただきありがとうございます。
そうですね。この記事を書いた頃と比べて、現在は、かなりお値打ちな価格でワイヤレスヘッドホンやワイヤレスイヤホンを購入できるようになりましたね。